精神科看護師

思春期に多い心の病気

思春期(青年期)は、身体的成長が急速に進む時期ですが、精神面でも急速に成長し親から自立しようとする大人への移行期です。急な心の変化に追いつこうと心のバランスが不安定になる時期となります。
また、自分自身を強く意識するようになり、自己の確立が進みます。→(自我同一性の確立)

その過程で多くの悩みや葛藤が生まれ、時には精神的な危機状況に陥り、思春期特有の心の病気が見られることがあります。

思春期に多い病

思春期の心の発達

前 期(13~15歳) 第二次性徴、第二の分離‐固体化(第二反抗期)
中 期(16~18歳) 親離れ・子離れ、独立と依存の葛藤、性同一性の確立
後 期(19~22歳) 自我同一性の確立、モラトリアム

摂食障害>

若い女性に多い病気であり、先進国に多いと言われています。また、文化や社会レベルとも関係しているとも言われています。

この病は神経性無食欲症(拒食症)と神経性大食症(過食症)の二種類がありますが、両者には共通点が多くその名を総称して摂食障害と呼びます。

思春期・成人期によく見られ、精神的な原因により食行動に異常をきたす病気です。

<神経性無食欲症(拒食症)>

思春期・成人期の女性に多くみられる病気です。
最近では小学生や男性にも少なくない病気となってきています。

過度のダイエットややせ願望により病的なやせ方をしている方が多くいますが中に病的な痩せ方をしているにもかかわらず、やせていることを否定し、体重増加に対する強い恐怖や抵抗を示している方がいたら拒食症を疑ったほうがいいかもしれません。

病的なやせは、無月経低血糖電解質異常など身体面へ影響を与えますがそのままにすれば更に、脳や精神状態(抑うつ、いらいらなど)にも影響を及ぼします。

生命に危険が出るほどに体重減少が著しい場合は、入院が必要になりますので、早めに専門医の診療を受けることが大切です。

<神経性大食症(過食症)>

この病気の人の多くも太ることを恐れており、過去に拒食症を経験しているケースが多く見られます。

食べることをどうしても我慢できず、短時間に大量の飲食物を摂取した後に、自ら食物を吐いたり、下剤を乱用したりします。(過食→嘔吐)
また、過食や嘔吐をやめられない自分への嫌悪感から自信を失い、人付き合いを避け、孤立となりがちとなります。

過食症の特徴
慢性的な抑うつ感イライラ感を持っており、そのような感情から開放されるストレス解消の一手段になり過食や嘔吐がやめられずに慢性化するという側面も持っています。

<思春期妄想症>

自意識が高まる思春期に見られる病気です。
「自分の身体的欠陥によって周りの人に不快感を与えている」と確信してしまう病気です。
例えば

・自己視線恐怖(自分の目つきが相手に不快感を与えている)
・自己臭恐怖(自分の嫌な臭いのため相手に迷惑を掛けている)
・醜形恐怖(他人に醜いと思われている)

などがあります。こういった症状が長引くようであれば、専門医にご相談ください。

<統合失調症>

思春期後期から成人期にかけて多く見られる病気です。
原因不明の内因性の精神疾患で、100人に1人弱の割合でみられます。

・典型的な症状

・幻覚  ・・・自身の行動を命令する、脅迫的な内容の幻聴など
・妄想  ・・・他人に追われている、盗聴されているなど
・自我障害・・・自分の考えや行動が操られている、考えが周囲に漏れているなど
・思考障害・・・思考全体につながりがなく、話にまとまりがないなど
・感情障害・・・いきいきとした感情表出なく、他人との感情交流が持てないなど

このような症状が多少個人差はありますが混在しています。また病気の経過によっても変化していきます。

<治療>

治療の中心は薬物療法となります。

早期発見・早期治療がとても大切であり、治療の開始時期が病気の予後に影響すると言われています。
最近は新しいタイプの薬が使われることが多くなり、生活の質も充実しています。

私の病院では

・クロザリル治療
・LAI(デポ注射)
・m-ECT(サイマトロン電気治療)

を行なっています。
また、作業療法デイケア生活技能訓練などのリハビリテーションを併用していくことも大切です。

<思春期うつ病>

思春期のうつ病は決して稀な病気ではありません。
思春期の2~8%に見られるといわれており、成人のうつ病と基本的に同じような症状がみられ、

・身体の不調や自分の存在価値を否定する気持ち
・イライラなどの不快な感情
・アルコールやドラッグの乱用
・自殺企図

などが比較的多くみられます。

また、
・摂食障害
・強迫性障害
・パニック障害
・社交不安障害
などが合併していることが多く、うつ症状が見逃されがちです。

薬物療法精神療法などにより軽快した後も、成人期に病気が再燃することや、また他の精神疾患に移行する前段階である場合もあるので慎重な対応が必要です。

<強迫性障害>

この障害は、不安障害の1つとして考えられており、自分で無意味であると分かっているがやらずにはいられない、不合理とわかっているが何度も繰り返してしまうという状態のことをいいます。
そのため、本人とっては、すごく不快であり、時間の浪費となり、日常の生活に支障をきたすことも多いです。

強迫観念(強迫思考)
考えが自分の意志とは無関係反復的・持続的に浮かんでしまい、打ち消すことができず、そのことで苦痛を感じる。

強迫行為(強迫的儀式)
その観念を打ち消すために、不合理と分かっている行動を何度も繰り返してしまうこと。やらずにはいられない。やってしまうと安心するがまた新たな強迫行動に移る

この二つに分けられます。

代表的な症状として
・不潔恐怖、手洗い恐怖(手がボロボロになるまで、何度も手洗いをします)
・確認癖(何度も確認する状態)
・疾病恐怖(病的に心配してしまう状態)

強迫性障害の重要な点は、本人がその考えや行動を自制できず、ひどく困っている状態であるということです。重くなると、通常の日常生活も送ることができなくなってしまいます。

この症状は、ストレスにより増減もみられ、また、うつ病や他の不安障害、さらには統合失調症との合併も多くみられます。

<適応障害>

ある特定の状況、または環境が自分にとって耐えがたいと感じ、強いストレスとなって気分や行動面に症状が現れるものです。
ある特定の辛い状況・環境と述べましたが、どのような環境や状況が強いストレスになるのかには個人差があります。
症状の具体例としては、

・憂うつな気分
・不安感が強くなる
・焦りが生じる
・意欲や集中力の低下
・イライラ感等
・身体症状として頭痛
・めまい
・動悸
・倦怠感

などが挙げられます。
そして、その症状はストレスに直面しているときだけ出現し、ストレスから離れると比較的安定しているといった、選択性があることが多いです。

ABOUT ME
moca
精神科看護師11年目。 趣味でアクアリウム(シュリンプ)をしてます。 ・bee ・タイガー ・ターコイズ ・ゼウス 家庭でゎ4人のパパです。 よろしくお願いします。